2010年4月25日日曜日

企業価値を向上させるには?

いよいよ来ました。これまでのことをふまえて考えると、資本提供者から見た企業価値を算出するには「将来のフリーキャッシュフロー」と「割引率」の2つだけが必要。では、経営者はこの2つを考えて、どのようにすれば企業価値を向上させることができるのか。

まず、フリーキャッシュフローの方から。一つの方法は資本提供者が期待したとおりのフリーキャッシュフローを生み出すこと。そうすれば、期待収益率=割引率と同じ割合で企業価値は向上します。

・・・あれ、意外でしたか?

前にも書きましたが、企業価値とは資金提供者が要求するリターン(=割引率)が達成されると仮定した場合、将来のキャッシュフローを実現するために必要な現在の投資金額。フリーキャッシュフローが期待通りに成長すれば、企業価値も期待通りに成長し、資本提供者も期待通りのリターンが得られるというわけです。

「なんかおもしろくない。俺は資金提供者が期待する以上に企業価値を成長させるぞ!」という経営者は将来のフリーキャッシュフローを期待以上に生み出す必要があります。例えば、(NPVというのですが)新規プロジェクトに投資を考えるとき、投下資本を含めたプロジェクトの将来のフリーキャッシュフローを、資金提供者が期待する収益率(割引率)で割り引き、それが0より大きい場合、そのプロジェクトを採用することで企業全体の将来のフリーキャッシュフローを増大させることできます。逆に0より小さい場合、将来のフリーキャッシュフローは減少し、企業価値も毀損してしまいます。

言い換えると、経営者が将来のフリーキャッシュフローを増やす投資を考える場合、

1. どのくらいの投下資本が必要か?
2. どのくらいの将来のフリーキャッシュフローが見込めるのか?
3. そのフリーキャッシュフローはどのタイミングで発生するのか?


が大切。当然ながら、投下資本は大きければ大きいほど投資のリターンは低くなります。また、ポジティブなフリーキャッシュフローの発生が遅れれば遅れるほど、割り引かれる割合が大きくなり、価値は減少してしまいます。つまりは1年後の1万円と10年後の1万円の関係。

次に割引率について。割引率を低下させることで、全く同じ将来のフリーキャッシュフローでも、企業価値を向上させることができます。前回のWACCにわくわくで、資本構成によって企業全体の割引率が変化すると言いました。そして、一般的には株主の資本コストに比べて、有利子負債の資本コストのほうが低い(かつ節税効果がある)ので、有利子負債の割合を増やすことで割引率を低下させることができます。

じゃあ、「目一杯、有利子負債を増やした方がいいのか!」というのは早合点。

考えてみてください。例えばトヨタ自動車が有利子負債が20兆円、株主資本が2.4兆円だったとしたら投資したいと思いますか。負債の返済に追われて、ちょっとしくじれば倒産しかねない、そんな感じがしません?つまり、有利子負債を増やしすぎるとデフォルトリスク(倒産リスク)が増大し、有利子負債と株主資本のコストは増大します。要は有利子負債と株主資本のバランスが重要。そのバランスはその企業の成長ステージ、ビジネスモデル、資産の構成(有形無形)などによるので、これが最適!と言うのはなかなか難しい。

何はともあれ、上記の3点に追加して

4. 投下資本をどのように調達しているか?(資本コストはいくらか?)

も大切。この点は意外と忘れられがち。いくら投資そのものがいいリターンを出せるとしても資本コスト(割引率)が高ければ、結果的にはマイナスになり、企業価値を毀損してしまいます。また、逆に言うと、投資そのもののリターンは低くても、資本コストがそれ以上に低ければ、企業価値を向上させることができます。

例えば、5%のリターンを出す投資案件があるとします。銀行から3%で調達すれば、単純化して5-3=2%のリターンを出すことができます。もし、消費者金融から10%で調達すると5-10=-5%のマイナスのリターンになってしまいます。

理論的にはこれら4点を考えながら、将来のフリーキャッシュフローを資本提供者の期待以上に増やし、割引率を低下させることで、企業価値向上を実現することができます。これは同時に、経営者がしっかりと企業価値を向上に努力しているかを見るための資本提供者の視点でもあります。

ちなみに、多くの有利子負債を使って投資をすることを「レバレッジを利かす」と言います。例えば、リターンが20%の投資案件があるとします。投下資本を100として、企業がその全てを株式で調達(レバレッジ0倍)したすると、株主は20を得ることができます。もし、企業が金利5%の有利子負債100、株式100で調達(レバレッジ1倍)したとすると、債権者は5、株主は35を得ることができます。もし、企業が有利子負債200(金利5%)、株式100で調達(レバレッジ2倍)したとすると、債権者は10、株主は50を得ることができます。もし、・・・という感じで、有利子負債を増やせば増やすほど、株主のリターンはどんどん増えていきます。しかし、上でも述べましたが、レバレッジを利かせば利かすほどデフォルトリスクが高くなります。

Wikipediaにいいデータが。


投資銀行の行き過ぎたレバレッジが今回の金融危機の原因の一つなってると言われているけど・・・ちょっと明らかにやりすぎ。

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