2010年2月26日金曜日

わかりにくいものほど重要だと思う

Venture capital(VC)の授業では、ランチの時間にゲストスピーカーを招いて、実際の投資について語ってもらう。先週は身内であるImperial VCの人が来て、Life ScienceのSeed financing(ほとんど売上がない企業に対する投資)について話をしてもらった。ちなみに、ファンドの規模は£100m程度で、欧州のTMTやClearn tech、Life ScienceのSeedやStart-upのステージの企業に投資をしているらしい。

個人的に気になるのはVCがどのようなスタンスで投資をしているのかということ。よく彼らが非難される例として「技術ではなく、お金儲けだけのために投資をしている」というもので、有名な企業家が「次に起業するときは絶対VCは入れない」というのをよく耳にする。実際に今回の話を聞いていても、ValuationはIBと一緒に、Business Plan Analysisは戦略系コンサルと一緒にしていて、自分たちはいかにリスクを軽減する投資の仕方を考えるかがポイントという、なんか機械的で、お金儲けの匂いはした。(ただ、限られた時間でシンプルに伝えなければならない状況と、実際はもっと複雑だとプレゼンターは言っていた。)

まず自明なのは、VC側が高いリターンを求めるのは当然だし、企業側も求められたリターンを出すように努力する必要がある。でもこれと、高いリターンだけを追求するスタンスとでは結果は全然変わってくると思う。例えば、外部環境の急激な変化によってその年のリターンが悪化した場合、リターンだけを追っているVCは更なる投資を諦めるだろうし、縛りによっては経営者を変えようとするだろう。もちろんこの判断が正しいかもしれない。でも同時に、彼らの行動によって、未来の大きく変えるかもしれない技術の芽がつぶされてしまうかもしれない。

じゃあ、どういうスタンスを持てばいいのか。自分は「その企業が未来に実現したいこと」をベースにスタンスを持つべきだと思う。そうすることで、例え外部環境による状況悪化があったとしても、「企業の実現の仕方」がぶれていなければ、彼らは投資を続けるという判断を下すことができる。もちろん、それ以外の要素も考慮しながらになるのは間違いないけど。

しかし、「その企業が未来に実現したいこと」と「企業の実現の仕方」は「目標リターン○%」に比べて非常にわかりにくい。それらを共有するには多くの時間を必要とするし、最悪の場合、共有できないことだってありうる。でも、SeedやStart-upのステージの企業の持つ可能性やそのリスクはひとつの数字だけで表せるものではないし、わかりにくい表現しかできないものもたくさんあると思う。VC側には、これらのわかりにくいものを含めて判断をするというスタンスが求められると思うし、新しいものを生み出すためには必要だと思う。

これはVCだけにかかわらず、企業に関わるステークホルダー(顧客、株主、従業員、取引先など)全てに言えると思う。もっと言えば、企業の規模にも関係ないと思う。よく言われる「企業は誰のものか?」という問いでは自分は「全てのステークホルダーのもの」だと答える。そう答えると「でも、そういうことを言っている企業(多くは日本企業)は実際に成功していないのではないか」と反論されるだろう。言わなければいけないのは、自分の答えの前提として、ステークホルダーが皆、前述したわかりにくい部分を共有している必要がある。しかし実際には、特にいろいろな人が関わる大企業では、それが難しいから「企業は株主のもの」で「ROEが重要な指標」というわかりやすものに落ち着いてしまう。

わかりにくいものほど、実は重要だったりするんじゃないかなーと思う。

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