2010年1月27日水曜日

国債の見通しの変更

昨日、Standard & Poor'sが日本国債の見通し(sovereign debt rating outlook)をNegativeに下げることを発表した。民主党の財政再建が予想以上に遅く、かつ中期的には成長につながるような感じがしないというのが理由らしい。民主党の政策は票集めのためか、ただ財政出動をすると本当に経済が回復すると信じているのかはわからないが、当然の評価だと思う。

現在、1000兆円弱ある日本国債のほとんどは日本国内(特に邦銀)が引き受けをしている。よく聞くのが「米国と違って日本は国内からファイナンスしているから大丈夫だ」ということ。これはWorton Schoolの教授も言っていたらしい笑。これには2つの問題があると思う。

1つめはいつまでも日本国内だけで国債を買い支えることは不可能だということ。日本全体の貯蓄は1500兆円と言われているが、国民や国内企業をナショナリティを理由に国債を買い支えようとしても、1500兆円以上になってしまったら買うことはできない。だってお金がないんだもん。

2つめは、もし国内での調達がダメになった場合、海外からの調達は今の金利では難しいということ。ふとこの状況を見て思う。日本は国内にしか国債を売っていないのか、それとも海外の金融機関が買おうとしないのか。これは後者だと思う。

国債の価格は金利と逆の関係になっている。理論的には国債のペイオフを金利をベースにした割引率で割り引くため、金利が上がれば国債の現在価値は下がるし、金利が上がれば現在価値は下がる。知ってのとおり、日本は超低金利をずーっと維持している。このため、国債の価格は高いままになっており、海外の金融機関にとっては全然魅力のない商品となっている。これを国債バブルという人もいる。

なんでこんな状況でも邦銀は国債を買い続けるのか。それは自分たちが買い続けないと日本経済が破綻してしまうのが予想できてしまうからだと思う。海外からファイナンスしようとした場合、金利を上げて、国債の価格を下げる必要がある。しかし、こんな経済が不安定な状態で金利を上げてしまうと、実体経済へのダメージは大きく、政府の税収減少につながることは必至。加えて政府の利払いの負担が増え、より大きなプレッシャーが財政にのしかかる。そしてまた金利を上げて・・・財政は破綻する。

これを防ぐには「インフレを起こせばいいのでは」と言う人と「増税をすればいいのでは」と言う人がいる。前者は日銀に国債を引き受けさせれば簡単に起こせると思う。しかし、インフレはコントロールできないので、一気にハイパーインフレになり、ついこないだのジンバブエになってしまう可能性さえある。さらに、インフレは債務者から債権者へ負担を移動させるだけである。つまり、国内でファイナンスしている日本の場合、国の負担は軽くなるけど、国民の資産価値が多く失われてしまう。じゃあ、増税はどうか。これも結局調達の仕方を「直接税金として国民からファイナンスするか」「邦銀を通じて調達をするか」の差だけであってなんの意味もない。だた国のバランスシートの見栄えは違うので、時間かせぎのために政府が増税をする可能性は十分にありうる。

結論はこの問題を簡単に解決する魔法みたいなものはないということ。そしてXデーはそんなに先の話ではない。一人ひとりが現実に目を向けて、財政をスリム化させていくことと、経済成長をどうしていくかを考えなかればいけないときなのだと思う。

ちなみに財政破綻が起こりそうになったら、政府は海外への資産移動を制限するだろう。海外でリスク分散を行う場合はお早めにw

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