2010年5月5日水曜日

ちょっと気になったので

最近何かと話題のGoldman Sachs。SECの件以外にもいろいろ大変みたいですね。これから書くことはGoldmanが嫌いとかそういうことではないのです。友人にも関係者がいたりするので。

今日の授業で気になる記事が紹介された。タイトルは「Goldman Sachs implicated in shorting Lehman shares」というものでGoldman SachsがLehman brothersの株式を空売りしまくることで破綻のきっかけを作ってたのではという疑惑。さらには、少し古いですが、ノーベル賞受賞者を抱えることで有名だったヘッジファンドLTCMの破綻にも大きな影響を及ぼしていたかもという98年のBusiness weekの記事の引用も(古すぎて引用の引用です)。

...if lenders know that a hedge fund needs to sell something quickly, they will sell the same asset - driving the price down even faster. Goldman Sachs & Co. and other counterparties to LTCM did exactly that in 1998.

こういうのを聞いてどう思います?

「いやー、こういうきっかけをしっかり掴んで流れを作るなんて、さすがGoldmanのトレーダー!」

「空売りによってファンドをつぶしたり、不況の原因を作るなんてありえない!」

「違法でも何でもないから全然問題ないでしょ」

大体、こんな感じでしょうか。授業ではレクチャラーが違うポイントについて質問したので、深い議論にはならなかったけど。

自分はもしこれらが本当だとしたら賛成できないな。それはなぜか。前にも述べたと思うけど、企業には事業をする目的があってしかるべきだと思うし、時代が変わって目的がなくなったのであればさっさと精算するなり、買収されるなり市場から退場すべきだと思っている。

自分は投資銀行の目的は
・金融商品を通じて顧客の企業価値を向上させること
・金融商品や企業の価値算出により市場の効率化に貢献すること
ではないかと。

もし、空売りを必要以上にすることで、Lehman brothersの株式やLTCMのターゲットを本来の価値からかけ離れた価格をつけるように行動していたのであれば、目的の2つ目と矛盾し、明らかに市場の非効率を作っている。これらの情報が本当だったら、本来の目的を忘れて、自身の利益のために行動していると言われてしまっても当然だと思う。

ちょっと戻って、なぜ市場の効率化が必要か(ちなみに市場の効率化は価値=価格の市場にしようとすること)。世界の大部分を占める資本主義というシステムは残念ながら完璧とは言えない。今回の金融危機のように、価値からかけ離れた取引(バブル)により、経済全体のバランスが崩れて、長く低迷してしまったりする。実はこれはなかなか防ぐことができない。例えば、企業の価値を知ろうとしても、企業内部の情報は全て得ることができないし、経営者が善人か悪人かなんてわからない。なので外部から企業価値を算出しようとすることは非常に難しい。これを情報の非対称性と言ったりする。他にも様々な要因があって、完全な効率的な市場を作ることはほぼ不可能。

この非効率さは金融危機のような形で世の中に悪い影響を及ぼしてしまう。もう少し小さい例を使うと、ルイヴィトンのバックの本物と偽物の区別は素人にはなかなかつかない。もし世界中に偽物がたくさん出回ってしまったら、消費者はどうするか。本物か偽物かわからないので、同じものだったら偽物の可能性が高いと信じ、安い価格のものを選んでしまう。そして、価値の高い本物を提供しているルイヴィトンは売上が減少してしまい製造を中止しまう。結局、世の中から価値の高いものが消えて粗悪品だけが残ってしまう。

これを防ぐにはどうしたらいいか。まず、投資銀行のような企業が(真の値に近い)価値を算出して、市場がそれをもとに動くよう流れを作る必要がある。そして、他の企業や人々も同じように価値算出する方法を学び、それに基づいて行動することが必要になる。とまではいかなくても、「偽物のブランドバックは作らないぞ」「企業情報は真実に基づいたできる限りの情報を公開するぞ」という常識やモラルに基づいた行動が求められる。実際、常識やモラルの最低限の部分は国家による規制になっているけど、それだけでは不十分。では、最近の流れのように規制を強くすればいいかというと、逆に奪う必要のない自由まで奪ってしまい、結果として非効率を作ってしまう。

これは、例えば、包丁なんかに似ていると思う。常識やモラルがない人が包丁を使えばそれは凶器になる。逆にある人が使えば調理に欠かせない便利な道具になる。もし、これが法律で規制されてしまったら、その地域のレストランや主婦は泣いて叫ぶほど不便になると思う。資本主義も同じ。使う人次第によって、凶器にもなり得るし、便利な道具にもなり得るということ。

長いのでまとめると、資本主義では、その不完全性から「違法合法」より一階層上の「常識やモラル」に基づいた分別のある行動が企業や個人にも求められる。そして、昨今の金融市場では重要なプレイヤーである投資銀行は金融商品や企業の(真の値に近い)価値を算出し、その値に基づく取引が行われるように促すべきである。しかし、空売りという行為を通じて、率先してその値からかけ離れるような非効率性を作ることは社会に悪影響を及ぼしてしまうし、もしそれが本当に行われていたのであれば、自分たちの役割が何かを考え直してもらいたいと思う。

・・・と駆け足で書いてみました。

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